都市部在住の成人中国人における食事の質と 2型糖尿病リスクの検証
Long-term Diet Quality and Risk of Type 2 Diabetes Among Urban Chinese Adults

野菜、果物、乳製品、種実類、魚介類を 豊富に摂取し、精製穀物や赤身肉および加工肉の摂取が少ない食生活は
糖尿病リスクの15〜25%低下と関連することが示唆され、
こうした健康的な食生活が長期間維持され、
さらに運動習慣をもつことでリスクは最も低下することが示された。

Yu D, and others.
Long-term Diet Quality and Risk of Type 2 Diabetes Among Urban Chinese Adults
Diabetes Care 2018 Apr; 41(4): 723-730. https://doi.org/10.2337/dc17-1626

私的コメント:赤身肉(獣肉)にも注目した点が大切だと考えています。
また魚介類、ナッツも糖尿病予防には良いようです。


腎機能障害を伴う2型糖尿病に対するmetformin単独療法とsulfonylurea単独療法の比較
Monotherapy with Metformin vs. Sulfonylureas for Type 2 Diabetes with Impaired Kidney Function

1件の観察研究で、メトホルミン(metformin)は5年時点での死亡がより少なかった。
1995年にFDAは、2型糖尿病患者に対しmetforminを承認した。
ただしそのラベルは、乳酸アシドーシスについての懸念を理由に、
腎機能障害患者に対してmetforminの処方を避けるよう臨床家に指示していた。
しかし2016年にFDAは、軽度から中等度の腎機能障害患者に対するmetforminの安全性を支持した。
2型糖尿病と慢性腎臓病を有する退役軍人において、metformin単独療法またはsulfonylurea(SU薬)単独療法の開始後に、
死亡リスクが異なるかどうかを決定するために、研究者らは、Veterans Affairsの病院で2004--2009年の間に
これらの薬物の単独療法を開始した患者175,000人のこのコホート研究を実施した。
フォローアップ期間中、約5,000件の死亡が生じた。複数の交絡する可能性のある因子で補正したところ、
metformin単独療法は(SU薬単独療法と比較して)、死亡の相対リスクが有意に36%低かった。
推算糸球体濾過量が90mL/分/1.73m2以上、60〜89mL/分/1.73m2、45〜59mL/分/1.73m2、30〜44mL/分/1.73m2
範囲内で、metformin単独療法は、1,000人年あたりの死亡がそれぞれ3.0件、4.3件、3.4件、12.1件少なく、
すべての差は有意であった。

コメント:残余交絡の可能性があるものの、この研究は、2型糖尿病と軽度から中等度の腎機能障害を有する患者において、
metformin単独療法の開始はSU薬単独療法の開始よりも低い死亡リスクと関連している。
この研究は、臨床家と、腎機能障害を伴う糖尿病患者を安心させるものである。
この患者群では、metforminがSU薬よりも優先的に処方されるべきである。

Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP Published in NEJM Journal Watch General Medicine April 3, 2018
CITATION(S): Marcum ZA et al. Mortality associated with metformin versus sulfonylurea initiation:
A cohort study of veterans with diabetes and chronic kidney disease.
J Gen Intern Med 2018 Feb; 33:155.
(https://doi.org/10.1007/s11606-017-4219-3)

私的コメント:高インスリン血症を起こすスルホニルウレア薬よりも、高インスリン血症を来さないメトホルミンの
有用性が示されていると考えています。


ジャガイモの摂取量と2型糖尿病発症には相関がある

食物摂取頻度調査票を用いて4年間のジャガイモの摂取量と
2型糖尿病の発症リスクとの関連を解析した前向きコホート研究によると、
ジャガイモの総摂取量(焼く=baked、ゆでる=boiled、マッシュポテト、フレンチフライ)が多いほど
2型糖尿病リスクは有意に上昇した。
週に1回未満と比べた場合の 週に2〜4回はハザード比=1.07、95%信頼区間0.97〜1.18
週に7回以上のハザード比=1.33、95%信頼区間1.17〜1.52

Potato Consumption and Risk of Type 2 Diabetes: Results from Three Prospective Cohort Studies
Isao Muraki, and others. Diabetes Care 2015 Dec; dc150547. https://doi.org/10.2337/dc15-0547

私的コメント:デンプンの多いジャガイモは血糖の急峻な上昇を招き、高インスリン血症をきたします。
ジャガイモは膵臓の疲弊を招き、2型糖尿病を引き起こしやすいことが考えられます。

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DPP-4阻害薬の死亡率減少は確認できず
SGLT2阻害薬、DPP4阻害薬、GLP-1作動薬の3種類の糖尿病治療薬を
比較したネットワークメタアナリシス

SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の死亡と心血管イベントに及ぼす影響と
それらの安全性を比較するネットワークメタアナリシスを行ったSean L. Zheng氏らは、
SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は患者の総死亡リスクを減らしていたが、
DPP-4阻害薬はコントロールと比較した生存利益を示せなかったと報告した。
JAMA誌2018年4月17日号に掲載された。

2型糖尿病患者に対するランダム化対照試験で、SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬の間で比較を行っていた試験、
またはプラセボや無治療と比較していた試験で、12週間以上追跡し、総死亡、心血管イベント、安全性のいずれかについて
研究からメタ解析を行った。
主要評価項目は総死亡に設定した。2次評価項目は、心血管死亡、心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中とした。
安全性の評価項目は、有害事象(あらゆる有害事象、重篤な有害事象、脱落を余儀なくされた有害事象)と低血糖に設定した。
クラス特異的な有害事象として、SGLT-2阻害薬は下肢切断、尿路感染症、性器感染症、
GLP-1受容体作動薬は急性膵炎と網膜症、DPP-4阻害薬では急性膵炎について解析した。

総死亡率について報告していた試験は97件だった。
コントロール群と比較した総死亡率は、
SGLT-2阻害薬群のハザード比は0.80(95%信頼区間0.71-0.89)、絶対リスク差は-1.0%(-1.5から-0.6%)だった。
GLP-1受容体作動薬はハザード比0.88(0.81-0.94)、絶対リスク差-0.6%(-1.0から-0.3%)だった。
一方DPP-4阻害薬はハザード比1.02(0.94-1.11)、絶対リスク差0.1%(-0.3から0.6%)だった。

SGLT-2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の総死亡率は、DPP-4阻害薬群と比較しても有意に低かった。
SGLT-2阻害薬群では絶対リスク差は-0.9%、ハザード比は0.78(0.68-0.90)、
GLP-1受容体作動薬群ではそれぞれ-0.5%と0.86(0.77-0.96)になった。

心血管死亡率は、コントロール群に比べSGLT-2阻害薬群(絶対リスク差-0.8%、ハザード比0.79、0.69-0.91)と
GLP-1受容体作動薬群(-0.5%、0.85、0.77-0.94)で有意に低かった。
DPP-4阻害薬とコントロール群の心血管死亡リスクに差は無かった(絶対リスク差は0%、ハザード比は1.00、0.91-1.11)。
DPP-4阻害薬とSGLT-2阻害薬を比較すると、心血管死亡率の絶対リスク差は-0.7%、ハザード比は0.79(0.66-0.94)で、
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を比較した場合には、絶対リスク差-0.5%、ハザード比0.85(0.74-0.98)になり、
これら2剤はDPP-4阻害薬より心血管死亡リスクが低かった。
一方で、これら2剤の間の心血管死亡リスクには有意差は見られなかった(-0.2%、0.93、0.78-1.10)。

SGLT-2阻害薬群では他のグループに比べ心不全の発生率が低かった。
コントロール群との絶対リスク差は-1.1%、ハザード比は0.62(0.54-0.72)、
DPP-4阻害薬とのリスク差は-1.1%、ハザード比は0.55(0.46-0.67)、
GLP-1受容体作動薬とのリスク差は-0.9%、ハザード比0.67(0.57-0.80)だった。
GLP-1受容体作動薬群とDPP-4阻害薬群の心不全リスクはコントロールと差がつかなかった。

心筋梗塞リスクの低下をもたらしていたのはSGL-2阻害薬のみだった。
コントロールと比較すると、あらゆる心筋梗塞のリスク差-0.6%、ハザード比0.86(0.77-0.97)、
非致死的心筋梗塞のリスク差-0.8%、ハザード比0.84(0.72-0.98)だった。
どの薬も、不安定狭心症リスクと脳卒中リスクについては低下をもたらしていなかった。

なお、GLP-1受容体作動薬群では、コントロール群、SGLT-2阻害薬群、DPP-4阻害薬に比べ、有害事象による治療中止率が高かった。
絶対リスク差はそれぞれ4.7%、5.8%、3.1%、ハザード比は2.00(1.70-2.37)、1.80(1.44-2.25)、1.93(1.59-2.35)だった。

解析の結果、DPP-4阻害薬やプラセボまたは無治療に比べ、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の死亡率が低減効果がみられた。
一方で、DPP-4阻害薬にはプラセボまたは無治療に優る総死亡率減少効果は見られなかったと結論している。

Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors, Glucagon-like Peptide 1 Agonists,
and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors With All-Cause Mortality in Patients With Type 2 Diabetes
Systematic Review and Meta-analysis
JAMA. 2018;319(15):1580-1591. doi:10.1001/jama.2018.3024
外部リンク→JAMA誌のアブストラクト

私的コメント:DPP4阻害薬とGLP-1作動薬は高インスリン血症をもたらします。
高インスリン血症を起こさないSGLT-2阻害薬の有効性がメタ解析でも示されたと考えています。


縦断研究のMaine-Syracuse Longitudinal Study(MSLS)に参加した地域住民953例(平均年齢62歳、女性59%)を前向きに解析し、
習慣的なチョコレートの摂取と2型糖尿病発症との関連を調べた研究によると、
チョコレートの摂取量と2型糖尿病の発症率は逆相関を示し、
心血管や生活習慣、食生活の各因子で調整した解析の結果、
チョコレートを週に1回以上摂取する人と比べて、全く摂取しないあるいはほとんど摂取しない人は
5年後の2型糖尿病の発症リスクが1.91倍(オッズ比、95%CI 1.03〜3.55、P=0.04)であったことが報告されている。

Crichton GE, et al.
Habitual chocolate intake and type 2 diabetes mellitus
in the Maine-Syracuse Longitudinal Study: (1975-2010): Prospective observations.
Appetite. 2017 Jan 1;108:263-269. doi: 10.1016/j.appet.2016.10.008.
私的コメント:なぜチョコレートに糖尿病発症予防効果があるのかが知りたいですね。


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